20150204
国連環境計画 (UNEP) による政府間交渉の結果、2013年1月1月13~18日に開かれた会合で「水銀に関する水俣条約」の条文案が合意。EU では2011年3月から水銀輸出規制を開始、アメリカは2013年1月から輸出規制を開始したことで世界的な水銀供給不足に拍車がかけられた。 日本国内の水銀需要は年間約5 t 。2011年における世界の水銀需要量は約2000 t と推定される。
■性質 原子番号:80 原子量:200.59±0.02 (日本化学会 原子量専門委員会, 2013) 密度:13.55 g/cm3 融点:-38.84℃ 沸点:356.58℃
Pt, Fe, Mn, Ni, Co, Mg, W 以外の金属類と容易にアマルガムを形成する。 水銀及び水銀化合物の大部分は毒性を持つ。
水銀含有鉱物のうち、採掘対象となっているのは辰砂と自然水銀。その他リビングストン石、バーセン石、シュバルツ石が採掘された。 水銀鉱石は環太平洋地域、地中海、ヒマラヤ地域といった造山帯に集中している。国際市況と公害規制の影響でアメリカ、メキシコ、トルコ、アルジェリア、スペインの主な鉱山は2000年代初めまでに閉山もしくは休山となった。現在の主要生産国は中国、キルギス (Кыргыз Республикасы)、ロシア、タジキスタンで (Ҷумҳурии Тоҷикистон)、中国とキルギスで世界の約8割を生産している。
■用途 古くは鍍金や朱色の顔料、消毒薬として用いられた他、苛性ソーダ製造用電極として水銀が用いられていた (水銀法)。 ()害、、O3rg ite, Co, Mg, W 塩ビモノマー製造触媒…中国、東欧 金のアマルガム製錬 アルカリ塩素工業
日本では製錬、鍍金、農薬、火薬、医薬品用途からの水銀代替が進められたため、需要は蛍光灯や液晶バックライトなどの電気機器、電池 (4.1%) など。 水銀条約により規制の対象となるランプは消費電力や水銀封入量により定められている。対象となるランプの製造、輸出、輸入が2020年以降禁止となるものであるが、現在使用中のランプは規制対象外。
■国内鉱山 北海道 ・イトムカ鉱山 (イトムカ鉱業所) 最盛期には自然水銀を年間200 t 産出。閉山後1973年からは含水銀廃棄物の処理を行う事業を開始し、日本で唯一水銀地金を生産する。
・竜昇殿鉱山
奈良県 ・大和鉱山
■水銀含有廃棄物のリサイクル 水銀含有廃棄物は前処理の後、ロータリーキルン (600~800℃) で焙焼し水銀を気化させる。水銀を除去した残差は管理型最終処分場へ送られ、分離された水銀蒸気は冷却精製、濃縮し無機水銀としてリサイクルされる。
■毒性 人体に取り込まれることで慢性~急性中毒症状が現れる。吸収経路は経器吸入 (呼吸器官からの吸入) 、経皮吸収 (皮膚への付着) 、経口摂取 (飲食など) がある。 急性中毒症状として腹痛、嘔吐、下痢、歯肉炎、肺炎、腎障害、循環器障害がみられる。また、慢性中毒症状として歯肉炎、手の震え、頭痛、不眠、倦怠感、脱力感、食欲不振、歯肉出血、腎障害、聴力障害、視野狭窄がみられる。
原油及び天然ガスには単体水銀、イオン状水銀及び有機水銀が多様な形態で含まれている。一般的に原油及び天然ガスで最も含有量が多いのは単体水銀であり、硫化銅やモリブデン系硫化物を用いた吸着剤を用いて除去される。
■水銀除去プロセス (mercury removal from natural gas) 天然ガス中に含まれる水銀を除去するプロセス。水銀アマルガム生成によるアルミニウム製機器の腐食を防ぐことを目的とする。硫黄や硫黄化合物で処理した活性炭を充填した固定床吸着塔に天然ガスを通すことにより、ガス中の水銀を吸着除去するプロセスなどが用いられている。アルミニウムは低温用材料としてLNGプラント、NGLプラントで広く用いられているので、原料天然ガス中に水銀蒸気が含まれている場合には、前処理として除去設備が必要となる。水銀アマルガムが配管を閉塞させる。
文献
日本化学会 原子量専門委員会 (2013):「原子量表 (2013)」について http://www.chemistry.or.jp/activity/atomictable2013.pdf
野村興産株式会社 事業内容 廃棄物処理・リサイクル http://www.nomurakohsan.co.jp/business/
一般社団法人 日本電球工業会:水銀に関する条約の制定について http://www.jlma.or.jp/information/20130125UNEP_Suigin.pdf
JOGMEC 石油・天然ガス用語辞典 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2013):レアメタルハンドブック 2013
mindat.org |